指導のねらい
1)シュートに対するパラダイムを変える
2)シュートの好不調の波をなくす

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1.パラダイムの紹介



 今回からシュートのさらなるレベルアップを目指す練習に入ります。これまで確認してきた基本編、実戦編、状況判断を踏まえ、さらに理解を深めてもらいます。

 まず最初に、
だまし絵を使ってパラダイムという言葉を紹介しました。パラダイムとは物事の捉え方、見方、考え方です。シュートを次のレベルまで引き上げるには、シュートに対する「考え方」を変えなければなりません。今までと同じ意識で練習していたら、今まで以上の技術にはならないのです。そのことを理解してもらうために、上の画像を見てもらいました。

 一番上の絵は、若い女の人に見える人もいれば、お婆さんに見える人もいましたね。だけど、この絵は一枚の絵です。つまり、同じものを見ていても人によっ て違って見えることがあるということです。シュートの練習も同じです。同じ練習をしているのに、ある人には上手くなる方法が見えていて、ある人にはそれが 見えていないということがあるのです。同じ練習を同じようにやっていれば上手くなるのではありません。

 この絵の女性が重い荷物を持って階段の前に立っていたら、皆さんは手伝ってあげようとしますか?お婆さんに見えていた人は助けようとすることができるか もしれません。しかし、若い女の人に見えていたら、手伝おうとは思わないかもしれません。

 
見え方が違えば、行動が変わるのです。練習に対しても同じです。見え方、感じ方、捉え方が違えば、行動が変わってくるのです。もし皆さんが今までと同じ考え方でシュート練習を続けたら、変化はありません。考え方を変えない限り、技術の変化はないのです。

 下の一見何だかわからない模様も、ある見方が分かればLIFEという文字が読み取れます。
同じ練習をしていても、上手くなるために大事なポイントが見えていない選手は、気づけないのです。何が大事か、何を意識しなければならないのか、そこにこだわっていくことがこれからの練習で非常に重要です。

2.ウォーミングアップ
 ・投げ上げパス
 ・カップリングドリブル
 ウォーミングアップに二人組でパス練習を行いました。皆さんのハンドリング能力、パス及びツーハンドシュートのコントロール能力、反応の速さなどを向上させるためのコーディネーションドリルです。

2人組で、一人が自分の真上にパスを上げます。

そのボールが落ちてくるまでにパートナーからパスをもらい、パスを返します。
パスを返した後に自分が投げ上げたボールをキャッチします。

このパスを返す前に色々なハンドリングを行ってもらいました。

レベル1.ボディサークル1周
レベル2.フィギュア8 8の字1周
レベル3.ボディサークル→フィギュア8

 カップリングのドリブルドリルも行いました。左右の手で違ったドリブルをする練習です。
1.その場と前後
2.その場とサークル
3.ミスリズムドリブル(片方1回片方2回のリズム)
4.その場と壁ドリブル

 ドリブル力アップにもつながりますし、左右の手で違うことを意識できるようになるので、是非繰り返し練習しておいてください。

3.シュートの基本確認  ワンハンドの選手は片手のシューティングから、ツーハンドの選手はヘッドセット(おでこの上で構えた状態)から、まっすぐ打つ練習を行いました。

 ここでは身体は動いていないし、シュートに使っている動作がかなり限定されているので、この練習でボールが曲がってしまうのは非常に問題です。

 ボールの持ち方、スナップの向き、タイミング、フォロースルーをチェックして
曲がる原因を徹底的に無くしていきましょう。いままでのパラダイムで練習していたら技術は変わらないので、今まではそこまで意識していなかったという部分へ意識を深めていきましょう!

 上級生を中心に、カメラでシュートの動画を撮影しました。カメラのコマ送りでシュートフォームをチェックすると、曲がる原因を作っているのが良く分かっ たと思います。今まで気づかなかったシュートの癖に気づけたのではないでしょうか。これもパラダイムが変わるきっかけです。チェックされたポイントは繰り 返し意識して修正していきましょう!

 
膝が内側に入ってしまう子が多かったので、シュートフォーム以外に膝の動かし方も注意していきましょう!

4.スキーマシューティング  今回は、試合での好不調の波を無くしていくことがテーマです。特に、一試合目が不調で次の試合に修正できるというパターンが多いようなので、一発目からエンジン全開でシュートを決めていけるように、ポイントを整理しました。

 試合になったら「いつもより長め」「いつもより短め」というくらいの感覚で微調整ができることが重要です。

 そうなると、「いつもより」という
「いつもの感覚」がつかめていることが大前提です。

 いつもの感覚をつかむためにスキーマシューティングという練習を行いました。シュートが入ったら一歩下がり、外したらその場で修正という練習です。

 シュートは再現性が重要です。同じようにシュートが打てない限り、修正力を高めることができないからです。シュートフォームを安定させて、修正力を高め つつ、このくらいの距離はこのくらいのスピードで打てばよいといういつもの感覚を磨いていきましょう!

5.99ersシューティング競争  色々な距離からシュートを決めなければならないシュートドリルです。ゴール下、ローポスト、フリースロー、エルボー、3ポイントを順番に決めていき、一番早くクリアした人がチャンピオンです。

 この練習で30秒以内に3ポイントをクリアできれば優秀です。
Aさんが30秒以内でクリアでした!すばらしい!

6.ジョニードーキンスドリル  シュートが入ったら1ポイント、シュートが外れたらマイナス3ポイントというルールで、21点たまるまで練習するというのが、ジョニードーキンスという選手の練習方法だそうです。

 今回はクリアポイントを10ポイントにし、シュートが外れたときの減点をマイナス1ポイントにしてチャレンジしてもらいました。
制限時間は1分間です。クリアできた人は減点を2点にしていきましょう。

 かなり集中力がつく良い練習方法です。繰り返し決めなければ得点を伸ばすことができないので、修正力と再現性が高まります。

7.2分40本インシューティング
 ⇔レッグスルー10
 シュートの好不調をなくすために、今回はすべての練習で
ファインセンタリングを常に意識
シュートはスウィッシュで決めるのが当たり前のパラダイム
再現性を高める(入ったシュートを繰り返す)
修正力を高める(外れたら原因を分析して修正する)
を意識してもらいました。

 これらの意識を深めていくため、2分間同じ人が打ち続けるシューティングを行いました。2分あると、だいたい40本シュートを打つことができます。まず は30本以上決めることができるようになるのが目標です。そのためには、上記のポイントをどれだけ意識できるかが鍵になります。

 パス役の選手にも、リバウンドを意識してもらいました。ボールを地面に落としてはいけません。そうすれば、自然と反応の速さが高まり、リバウンドの落下 地点の読みを練習することになります。ただぼーっとリバウンドをしている選手のパラダイムから卒業しましょう。ボールが地面に落ちたら「
チェリーピッカー(落ちてるサクランボを拾い集める人)」と呼ばれてしまいますよ!

 人数が多いので、二組に分けて片方の組にはレッグスルー10にチャレンジしてもらいました。
 レベル1:内側通し
 レベル2:外側通し
 レベル3:内側2回スキップ外側2回
 レベル4:内側3回スキップ前足回し
 レベル5:外側3回スキップ前足回し
 レベル6:利き腕片手
 レベル7:逆腕片手
 レベル8:利き腕片手3回スキップ前足回し
 レベル9:逆腕片手3回スキップ前足回し
 レベル10:両手逆さ外側通し

 この練習をレベル10までクリアできるようになった選手達はこれまでガードとしての活躍の幅を広げています。是非チャレンジしてみて下さい!

8.実戦スキーマシューティング DF付1分 (リバウンドの意識)  入ったら下がる、外れたらその場で修正という練習を、ディフェンス付きで練習しました。ディフェンスがいる状態での修正練習は、試合中に修正できる選手になるための大事なシューティングです。ディフェンス役の人は引き続きリバウンドを意識してもらいました。

 関東では小さいチームになってしまうので、ボールに飛びつく速さがリバウンドに必要です。
 ジム・ブランデンバーグというコーチが、
「リバウンドは最も背の高い選手がとるものでもなく、最も高くとべる選手がとるものでもない。リバウンドは最も速くボールに到達できる選手がとるものだ。」と言っています。

 予測力を磨き、反応を早くしていけば小さい選手でもリバウンドを取ることができるのです。その能力をぜひ磨いていきましょう!


9.1分1on1  1分間、繰り返し同じ人が1on1をする練習です。この練習は、1人がオフェンスをやり続けるので、前のプレーをすぐに修正したり、意識をし続けられるのが特徴です。そして、体力的な消耗のなかでパフォーマンスの崩れを修正するという練習にもなります。

 限られた時間の中でたくさんシュートを決めなければならないので、パスキャッチからすぐシュートを打つことができる選手、そのシュートが確率良く入る選手の方が好成績をおさめられます。
シュートを打てる時は打つ!という習慣作り、打てないくらいディフェンスが近かったら抜いていくという意識づくりもねらいになります。

 1分で10本インできたらかなりのレベルです。今回は5本以上決められたらディフェンスの負け、5本以内に抑えられたらオフェンスの負けというルールで行いました。5人組位の人数で、同じくらいのレベルの選手とたくさんやりましょう!

10.フラッシュシューティング2分40本  最後にフラッシュシューティングを2分間行いました。7月までに、40本インをチーム全体でクリアしていきましょう!

 このシューティングで2分40本をコンスタントにクリアできるようになれば、大会に向けて一つ目標をクリアしたことになります。今回、低学年の組も30 本を超えてくるなど、だいぶチーム全体のレベルアップが確認できました!その調子で、シュートのパラダイムを深めていき、チーム全体でレベルアップしてい きましょう!


 指導の感想と次回へ向けてのコメント
 最後に、チームスポーツの選手になる上で大事な3つの習慣を紹介しました。
1.人のせいにしない(主体性を発揮する)
2.目的を持ってはじめる
3.重要事項を優先する


1.影響の輪と関心の輪の話を紹介しました。自分で変えられない部分(関心の輪)に意識を向けるのではなく、自分で変えられる部分(影響の輪)に意識を向 けていくことが重要です。それができると、人のせいにしたり、環境のせいにすることはなくなります。こういう選手のことを
「主体性がある選手」といいます。困難にぶつかっても自分で解決していける選手、行動させられるのではなく自ら行動する選手です。

2.次に、目的を持って練習に取り組むことです。みんなで一つのチームという船に乗っているので、ある人は熱海に行きたくて、ある人はアメリカに行きたい だと、船の中でけんかが始まります。目的を共有することが大事です。そして、この練習はどんな目的か理解することが大事です。この船がどこに向かっている のか分からなければ、荷物の準備も出来ません。船に乗る前に、行き先を確認しなければ、浮き輪やサンダルを持って雪が降る北の国へ連れて行かれるかもしれ ないのです。
目的をもって練習をはじめる、練習の目的を理解するということが選手としての成長に大きく影響します

3.目的がはっきりすれば、大事なことを優先することができます。シューティング練習中に、別なチームの転がったボールをとってあげようとしてパートナー へのパスが滞ってしまうようであれば、優先順位を意識していることにはなりません。まずはパートナーにボールを渡し、そして練習の効率を下げないように素 早くボールを拾ってあげるのです。他のペアのボールを拾うなと言っているのではありません。この練習の目的はシュート力を高めることで、本数のクリア目標 が決まっているのだから、まずはパートナーがそれを達成できるように協力すること、それが出来てなおかつ他のペアにも協力できたら最高です。大事なことを 優先することは試合中の判断力を高めることにもなります。
 今回、パラダイムの話を紹介したので、こういった個人個人のパラダイムについても紹介させていただきました。また次回チームとしての大事な3つのパラダイムをご紹介したいと思います。それでは、また次回も楽しみにしています!